世界的に重要な記録物の保存などを目的としたユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」に、東京・増上寺の史料「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書(そうしょ)」が登録された。17日にあったユネスコの執行委員会で決まった。日本に関連する「世界の記憶」の国際登録は9件目。
登録された史料は、中国や朝鮮で12~13世紀に印刷された「大蔵経(だいぞうきょう)」と呼ばれる仏教聖典の集成で、総数約1万2千点にのぼる。徳川家康が17世紀初頭に日本全国で収集し、増上寺に寄進した。
王朝の変遷や戦乱などで多くの大蔵経が散逸する中、15世紀以前の史料がほぼ完全な状態で残っているのは、世界的にも珍しいという。
一方、増上寺の史料とともに日本政府が推薦していた「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」は登録が見送られた。広島に投下された原爆の被害や影響を伝える写真1532点と動画2点からなり、保存や活用に携わってきた朝日新聞社、中国新聞社などの6者が共同申請していた。
共同申請6者は「今回は登録がかなわず、大変残念です。しかし『広島原爆の視覚的資料』という記録物は、国際平和の実現への道筋において、今後一層重要になっていくと確信しています。その価値を全ての国に理解していただけるよう願うとともに、共同申請者一同は、日本ユネスコ国内委員会を所管する文部科学省と協議しながら、引き続き『世界の記憶』の国際登録を目指してまいります」とのコメントを出した。